病院・クリニック経営の仕組みや戦略立案のためのポイント
.png)
病院・クリニック経営の状況と仕組み
医療機関には「法人立の医療機関」と、「個人立の非法人立の医療機関」があります。
法人立の医療機関では、医療法人の場合は理事長、公立の場合は病院開設者・管理者が経営の責任を担います。
そして、管理者である病院長が診療の責任を担う仕組みになっています。
一方、個人立のクリニックでは、院長が開設者・管理者として経営と診療両方の責任を担っています。
このように経営を担う責任者を中心に、病院・クリニックの経営が円滑に行われるように状況の把握や分析、必要に応じて改善策が講じられています。
病院・クリニック経営の仕組み
病院・クリニックの収入は、主に保険診療と自由診療で構成されています。
このうち、多くの医療機関では保険診療を収入のメインにしています。医療費は、国が全国一律で“診療報酬”という制度で価格を設定しており、医療機関が診療報酬の金額を自ら決定することはできません。診療報酬は、医療の進歩や現状の経済状況とかけ離れることがないよう2年に1回見直しが行われています。
診療報酬などによって得た収入は、スタッフの給与などの人件費、医薬品や医療機器の購入・リース費など病院の運営費用として使用されます。運営費が収入を上回ってしまい赤字が続いてしまうと、病院は経営難となり継続が難しくなってしまうケースもあります。
病院・クリニック経営状況の調べ方
病院・クリニックの経営状況は、さまざまな方法で調べることができます。
たとえば、医療法人立の医療機関は、各都道府県へ事業報告と決算書を届け出なければなりません。その上で各都道府県は情報開示の請求があれば、情報を開示しています。
また、厚生労働省など各種機関から医業経営分析の調査資料も登場しています。調査資料では、医業利益率、人件費率、患者1人あたり1日あたりの収益などの指標が適切な状態であるかを分析した調査結果をまとめています。たとえば、厚生労働省の「病院経営管理指標」では、一般病院・療養型病院・精神病院に分類し統計情報を作成しています。
病院・クリニックの経営指標・経営分析
病院・クリニック経営の分析手法
病院・クリニック経営の分析手法には、同一の医療機関の年度別の経営状況を比べる経年比較、同規模の他病院と比べるベンチマーク比較、公的機関による定型的調査で求められる指標に沿った分析などがあります。
どれか1つの分析手法を行っている病院・クリニックから、複数の分析手法を組み合わせているところまでさまざまです。
病院・クリニックの経営指標の計算式
経営指標とは、経営の目安となる数値のことです。
一般企業と同様、病院・クリニックにも経営指標があります。代表的な経営指標には「平均在院日数」「病床利用率」「病床稼働率」があります。それぞれの指標を算出する計算式とともに確認しておきましょう。
病院・クリニックの経営指標①:平均在院日数
平均在院日数は代表的な経営指標の1つです
。平均在院日数が短くなると、1か月間に入院できるのべ患者数が多くなった結果、入院による収益が増えることを示しています。平均在院日数の計算式は次のようになっています。
平均在院日数=月間延べ入院患者数÷{(月間新入院数 + 月間退院数)÷2}
病院・クリニックの経営指標②:病床利用率
病床利用率は、病院・クリニックの病床がどれくらい効率的に利用されているかを示す指標です。
病床利用率が100%に近いほど空いている病床が無く、効率的に利用されていることを示しています。病床利用率の計算式は次のようになっています。
病床利用率(%)=24時時点の患者数÷病床数×100
病院・クリニックの経営指標③:病床稼働率
病床稼働率は、運用されている病床数に対して、どれくらい入院されていたかを示しています。病床稼働率が高いほど効率的にベッドが運用されていたことを示しています。病床稼働率の計算式は次のようになっています。
病床稼働率(%)=(24時時点の患者数+1日に退院した患者数)÷病床数×100
経営難に陥る病院・クリニック、どのような戦略が必要か
病院・クリニックの経営課題には、高齢化に伴う後継者不在、人材不足や経営不振などさまざまなものが挙げられます。
46%の病院・クリニックが経営難
近年、多くの病院・クリニックが経営難に陥っているといわれています。
一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会が新型コロナウイルス感染拡大による病院の経営状況を把握する事を目的として共同で行った『新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第3四半期)』によると、46%の病院が赤字という結果になり、経営状況の悪化が拡大していることが分かります*。
医療機関の統合や再編などが検討されるなか、新型コロナウイルス感染症の流行によってさらなる課題に直面している状況といえるでしょう。特に、コロナ患者を受け入れている病院・クリニックでは、診療制限などによって赤字が拡大しているといわれています。
*出典:一般社団法人日本病院会・公益社団法人全日本病院協会・一般社団法人日本医療法人協会「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第3四半期)」2021年
病院・クリニックの経営戦略
病院・クリニックの経営課題を改善するためには、効果的な経営戦略が必要になります。経営戦略を立案するためには、現状の経営状況を把握するための分析が重要です。
たとえば、集患が課題となっている場合には、アナログ広告、デジタル広告を組み合わせた広告戦略を実施しなければならないケースもあるでしょう。あるいは、業務の効率化をはかるためにITシステムの導入が有効な例もあると考えられます。
これからの病院・クリニック経営
今後、病院・クリニックの赤字を改善するためには、医療収益の増加とコスト削減が重要になります。
地域の医療連携が推進されるなかで、少子高齢化の進行とともにニーズが拡大する在宅医療や訪問診療などを含めて、診療体制や診療内容の見直しが重要になるでしょう。
また、近年、医療のIT化が推進されています。IT化の推進は情報の共有や業務の効率化などのメリットがあり、経営状況の改善につながることが考えられます。
医療経営コンサルタントに相談する選択肢も有効
病院・クリニックの経営状況を改善させるために、医療経営コンサルタントへサポートを依頼するという選択肢もあります。
医療経営コンサルタントとは、病院・クリニックなどの医療機関の経営面の課題に対するサポートや解決策の提案を行う専門家です。
経営状況の分析や経営戦略の立案を始めとする多様なサポートを行います。
さまざまな医療経営コンサルタントの中から、自院が抱える経営のお悩み・課題に合わせたコンサルタントへ依頼するとよいでしょう。
関連記事タグ
関連記事

【病院・クリニックの経営に悩む方向け】病院経営コンサルタントを選ぶポイントは?
