M.PLATトップニュース・記事一覧病院経営病院経営 > 【改善法は?】病院・クリニックの経営難・経営破綻の原因と事例

【改善法は?】病院・クリニックの経営難・経営破綻の原因と事例

2021/12/17 11:56
近年、病院・クリニックの経営難が課題となっています。 人口減少によって集患が見込めない地方の医療機関、同一地域内の医療機関数が多く競争を余儀なくされている都市部など、全国的に経営状況は厳しく、半数以上の病院が赤字財政に陥っているという報告もあります。さらに経営難に追い打ちをかけたのは、新型コロナウイルス感染症の流行です。 病院・クリニックの経営難の状況はどのようになっているのでしょうか。実際に経営破綻した事例とともにご紹介します。

病院・クリニックの経営難・経営危機とは?

image

近年、医療機関の経営難・経営危機が課題となっています。少子化や新型コロナウイルス感染症の流行などによって集患が阻まれた結果、赤字財政に陥り、経営危機を迎えている医療機関も少なくありません。

帝国データバンクによると、2019年の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産は45件で、過去10年間の中でもっとも多いことが分かっています*。
また、近年の新型コロナウイルス感染症の流行は、医療機関の経営に大きな影響を与えました。日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会が共同で行った調査によると、新型コロナウイルス感染症の流行により多くの病院で入院患者数・手術件数などが減少し、経営難となっていることが明らかになっています。
なお、新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れを行った病院では、特に赤字経営に陥っている割合が多いことが分かっています**。

*出典:帝国データバンク「特別企画:医療機関の倒産動向調査(2019年)」2020年
**出典:一般社団法人日本病院会・公益社団法人全日本病院協会・一般社団法人日本医療法人協会「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第4四半期)」2021年

一般病院の経営難~41.3%が赤字経営

福祉医療機構によると、2019年度の一般病院全体の医業収益率は、人件費などの費用が収入を上回った結果、前年度よりも低下したことが分かっています。また、赤字経営の病院の割合は前年度よりも拡大しており、2019年度時点で41.3%と、ここ数年でもっとも高い割合であることが明らかになったのです*。
2020年度以降は新型コロナウイルス感染症の影響によって、集患が阻まれ、さらなる経営難に陥った病院が多いと考えられます。

*出典:独立行政法人福祉医療機構「2019 年度(令和元年度) 病院の経営状況について」2020年

精神科病院の経営難~新型コロナウイルスの影響が大か

福祉医療機構によると、2019年度の精神科病院全体の医業収益率は、人件費や経費の割合が増加したことを主な理由として前年度よりも大きく低下し、過去最低の水準であることが分かっています。
ただし、赤字経営の病院の割合は前年度と比べてほぼ横ばいという結果になっています*。
なお、ほかの診療科と比べて、2020年度以降の新型コロナウイルス感染症の影響によって経営難に陥る病院は少ないという報告もあります。

*出典:独立行政法人福祉医療機構「2019 年度(令和元年度) 病院の経営状況について」2020年

診療所・クリニックの経営難の実情

診療所・クリニックの経営は、近年の新型コロナウイルス感染症の流行もあり厳しい状況といわれています。
経営が破綻したり、自主的に診療所・クリニックを廃業したりするケースも増えているという報告もあります。
たとえば、帝国データバンクの調査によると2021年は6月までに累計267件のクリニックが市場から退出したことが明らかになっています。
このペースで進めば、2021年が終わるころには500件以上のクリニックが市場から退出する可能性があるといわれているのです*。
また、都市部など地域によっては同一地域内に競合となる診療所・クリニックが乱立しているために集患につながらず、経営難に陥ってしまう診療所・クリニックも少なくないといわれています。

*出典:帝国データバンク「急増するクリニックの廃業、過去最多ペースで推移 ― コロナ禍で長期化する受診控え、経営に大きな打撃」

病院・クリニックの赤字割合は?

image

黒字化している病院と赤字財政に陥っている病院の比率を発表した、いくつかの調査結果があります。
たとえば、日本病院会、全日本病院協会、本医療法人協会の3団体が行った「2019年度病院経営定期調査」では、1,412病院のうち赤字財政の病院が55.3%あったことが分かっています*。
調査によって対象となる医療機関の属性が異なるため数値に違いはありますが、どの報告でも概ね半数以上の病院で赤字経営を行っている結果になっています。
また、かかりつけ医としての機能を持つ診療所・クリニックでは、経営難のため廃業や倒産の数が急増していることが分かっています。

*出典:一般社団法人日本病院会・公益社団法人全日本病院協会・一般社団法人日本医療法人協会「2019年度病院経営定期調査」2019年

病院・クリニック経営破綻の原因と事例

image

病院・クリニックが経営難に陥る原因はさまざまです。
たとえば、医師や看護師など人員不足の解消や働き方改革への対応のために増員したために人件費が増大したものの、集患につながらず赤字の状況が続き経営難になってしまうケースがあります。

また、同一地域内に競合となる医療機関が多く差別化が図れないために集患につながらなかった結果、経営難に陥る場合もあるでしょう。
特に近年では新型コロナウイルス感染症の流行によって「受診控え」が進んだ結果、収入が大幅に減少した医療機関が多いといわれています。さらに感染症対策のコストが増えたことも経営難につながったと考えられます。
特にクリニックでは、新型コロナウイルス感染症対策で手洗い・うがいが徹底されたことで、インフルエンザや風邪などの受診が減少したことで経営難につながった例も少なくないでしょう。

医療法人が経営破綻した事例

病院・クリニックなど医療機関が経営破綻した近年の事例をいくつかご紹介します。
たとえば、都市部の有名なクリニックを運営していた医療法人が経営破綻した例。
同法人は賃料や人件費、設備投資など多額の運営費用をかける一方で、集患対策を十分に行わなかったために経営難に陥ったといわれています。
資金繰りがうまくいかず、クリニックを運営する医療法人は最終的に約9億円の負債金額を背負い、破産手続きを行ったことが分かっています。
ほかにも、著名な医師が所属する病院が経営破綻したケースも報告されています。同病院は経営難に陥った結果スタッフの信頼を得ることができず、スタッフの退職が相次いでしまいました。病院として機能しなくなり、経営破綻することになったのです。

「病院経営ランキング」とは? 経営崩壊した医療機関も

さまざまな媒体で、定期的に病院の経営ランキングが発表されています。たとえば、週刊東洋経済では、民間医療法人の売上高をもとにランキングし、それぞれの営業利益率と自己資本比率を算出しています。
医療機関の経営力を判断するために、このようなランキングを1つの参考にすることもおすすめです。ただし、実際にランキングに入るような売上高をあげていた医療法人が経営破綻した例もありますので、注意が必要です。

経営難の病院・クリニックの改善事例

image

経営難に陥った病院・クリニックの改善事例をいくつかご紹介します。
赤字を脱却できない地方のA病院。赤字体質が続いてしまうことに危機感を持った同病院の院長は、数々の病院の経営難をサポートしてきた実績のある経営コンサルタントへ支援を依頼。その結果、医療の質を維持しながら医薬品などのコストを見直し、年間1億円以上のコスト削減に成功したといいます。

また、クリニックでは地域のほかの医療機関と明確な差別化ができず、経営難に陥る例が少なくないといわれています。専門的な治療の導入や、オンライン診療の対応など、ほかのクリニックとの差別化に成功し、経営を改善することができた例もあります。

このように経営難に陥っていたとしても、何らかの対策によって経営状況が改善される病院・クリニックもあるのです。
なかには、病院経営コンサルタントの支援をきっかけに赤字経営から脱却できた例もありますので、経営状況を改善させるために一度、病院経営コンサルタントへの相談を検討してみるのもおすすめです。

関連記事タグ

関連記事

お役立ちガイドDL

病院経営
病院経営お役立ちガイド

関連製品・サービス

人気ニュース・記事